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あの一件以来、玄関を出入りする時は、慎重に、手元を狂わせないようにしています。風の強い時は特にです。子どもに朝食を食べさせ、毎朝観ている幼児番組が始まるのに合わせ、子どもがテレビに夢中になっている間に、ゴミ出しをしようとしたのです。その数日前から、玄関のドアのクローザーの調子が悪いのは気づいていました。入居当時に比べ閉まる時の抵抗が弱く、風の強い日は勢いよく閉まったりしていました。

その日も風が強く、私は両手にゴミ袋を持っていたので、風に任せて勢いよくドアを閉める形になってしまいました。ゴミ捨てを終え部屋に戻り、ドアを開けようとすると、なんとドアガードアームが閉まっているではありませんか。子どもはドアガードアームに手が届く背丈ではありません。では誰かかけたのでしょう。そう、風です。勢いよくドアが閉まった時に、元々微妙な位置で止まっていたドアガードアームが、偶然かかってしまったのです。その日の朝、空気の入れ替えをする際に、リビングの窓ガラスを開け、玄関のドアも、ドアガードアームをドアストッパー代わりに使い、開けたのです。その後、窓ガラスは閉めたのですが、ドアガードアームは、きちんと最後まで戻さなかったことを思い出しました。魔がさしたのです。

その後はパニック状態で、管理人室に駆け込みました。管理人さんと一緒に私の部屋のお隣のお宅を訪ねて、幸いご在宅だったので、隣戸からバルコニーを渡って、自分の部屋のバルコニーに行きました。自分の家の窓ガラスを割るときの気分って、想像できますか。マンションの窓ガラスって、想像以上に固いのです。隣戸の方に借りた工具を何度か打ち付けて無事に窓ガラスを割り、鍵を開けて子どもの元に戻れたのですが、窓ガラスが割れた時の音と感覚は、今でも忘れられません。それは、部屋に戻れる安堵と、窓ガラスを割ってしまった残念さが入り混じった、複雑な気持ちだったのです。